映画は読み物。

読むほどに映画が好きになる。

映画「Wanka チョコレート工場のはじまり」の元ネタ「夢のチョコレート工場」のネタバレ感想!

ウォンカチョコレートの秘密を描いた作品、ティム・バートン監督チャーリーとチョコレート工場が人気ですが、この作品とほぼ同じ内容のオリジナルの作品がありそれが1971年夢のチョコレート工場です。

50年前の古い作品ですが、今観ても色褪せるどころか、現代では作れない作品独特の味わいがあり魅力的です!

個人的にはオリジナル版のほうが好きなくらいです。

そして、23年12月公開のティモシー・シャラメ主演「Wanka チョコレート工場のはじまり」はオリジナル版の全日譚である事が公表されていますので、予習も兼ねて是非この機会に観て頂きたいオススメの作品です!

Paramount Pictures Corporation

 

<作品情報>

夢のチョコレート工場

Willy Wonka & the Chocolate Factory

1971年/アメリカ/100分/日本劇場未公開

原作児童小説:「チョコレート工場の秘密ロアルド・ダール

監督:メル・スチュアート

キャスト

ウォンカ/ジーン・ワイルダー

チャーリー/ピーター・オストラム

バイオレット/デニス・ニッカーソン

マイク/パリス・テメン

オーガスタス/マイケル・ボルナー

べルーカ/ジュリー・ドン・コール

ジョーおじいさん/ジャック・アルバートソン

 

<あらすじ>

菓子店に群がる子供達のいちばん人気ワンカ・チョコレート。菓子店の外から、その様子を恨めしそうに眺める少年チャーリー。母と4人の祖父母と肩を寄せ合い、チャーリーは新聞配達で家計を助け、貧しい生活ながら暖かな家族です。

ある日、ワンカチョコレートに5枚限定で”金の券”が入れられ、当たった者はチョコレート工場へ招待されるというニュースが流れました。

ワンカは同業者のスパイを恐れて工場を閉鎖したのですが、3年前に再びワンカチョコレートの販売を開始していました。しかし、工場の門は依然固く閉ざされたままで、謎の多いチョコレート工場です。

そんな秘密の工場を見学できるとあって、チョコレートは飛ぶように売れ、金の券をめぐって激しい争奪戦が始まりました。

ひとりまたひとりと金の券が当たった子供たちのニュースが飛び込んでくる中、チャーリーが買えたチョコレートはたったの2枚。自分にチャンスがめぐってくることはないとあきらめかけたチャーリーでしたが、道端に落ちていたコインを発見し菓子店で買ったワンカチョコレートには5枚目となる最後の金の券が入っていました!

そして、チャーリーとジョーおじいちゃんの夢のチョコレート工場への冒険がはじまります。

 

オズの魔法使」オマージュのミュージカル作品

オズの魔法使は1939年公開のアメリカ映画です。

本作よりずっと昔の作品ですが、そっくりな部分が多いですし、今観ても楽しめる映画史に残る大傑作ファンタジーミュージカルです。

夢の様にポップでカラフルな色使い、時々挟み込まれるセリフに代わる歌声、そして何と言ってもそっくりなのが、オズではマンチキン、本作ではウンパルンパと呼ばれる小人たちです。それに加え、発明好きなオズの魔法使のキャラクターとワンカのキャラクターもそっくり!

まさにオズで描かれた夢の世界が、そっくりそのままチョコレート工場に入ってしまった世界観はタイトル通り「夢のチョコレート工場」です。

 

最近の映画ですと「Pearl パール」にも沢山の「オズの魔法使」のオマージュを見つける事が出来ます!

いよいよホラー映画の世界にまで入り込んでしまったオズです!

 

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ティム・バートン版との一番大きな違い>

ワンカの過去や生い立ちが一切描かれていないところが「チャーリーとチョコレート工場」のウォンカと大きく違うところです。(名前の字幕表記がまず違います。笑)

ティム・バートン版はウォンカの子供の頃の話や、初めてチョコレートを食べた時の話。ウォンカの父親も登場しているなど、既にチョコレート工場のはじまりとも言える部分が描かれています。

なので物語の前日譚を作るにあたっては、オリジナルの本作の方が好都合だったのかもしれません。

 

※ここからはネタバレが含まれますので、未鑑賞の方はご注意下さい!

 

Paramount Pictures Corporation

<次々と脱落していく子供たち>

ワンカの目的は自分の後継者となる正直で心優しい子供を探すこと。

工場を見学する中で、手を触れてはいけないと注意されているにも関わらず、好奇心旺盛な子供たちは暴走してしまい脱落してしまいます。

オーガスタス→食いしん坊の彼はチョコレートが流れる小川を見つけるや否や、素手で流れるチョコレートを食べはじめ、前のめりになり川に転落してしまい脱落。

バイオレット→年中ガムを噛んでいる彼女は、まだ試作段階のフルコースが味わえるガムを食べてしまいます。トマトスープから始まり次々味が変化していく不思議なガムの味がデザートのブルーベリーパイに差し掛かると、彼女の顔色が青くなり膨らみはじめブルーベリーのようになってしまいジュース室送りとなり脱落。

チャーリー→ジョーおじいちゃんと一緒にふわふわドリンクを飲んで体がどんどん宙に浮かんでいきます。楽しく空中遊泳していた2人ですが天井で回るファンに巻き込まれそうになるピンチを迎えます。おじいちゃんはゲップをすると体が沈むことを発見し2人はゲップを繰り返しながら無事に地面に降りることができました。

ワンカはこれに気付かなかったのか、2人はしれっと見学の輪の中に戻ります。

べルーカ→何でも欲しがる我儘な彼女は、金の卵を産むガチョウを欲しがり駄々をこね暴れます。良い卵と悪い卵を選別するタマゴ・ワケールの乗った彼女は悪い卵と判別されそのままシューターでゴミ箱行きとなり脱落。

マイク→ワンカ・ビジョンという瞬間移動でテレビ画面の中に入れる革命的な機械。テレビっ子のマイクはこれでTVスターになれると大喜びでしたが、体が画面サイズの小人になってしまいました。体をタフィー作りの機械で伸ばす事となり脱落。

 

チャーリーも注意を聞かず、ふわふわドリンクに手を出してしまっていますが、最初に「飲んでみよう。」と言い出しだのはおじいちゃんです(笑)

実は、この出来事が物語のラストの伏線になっています。

 

<一生溶けないキャンディ>

一個で一生味わえるというカラフルなこのキャンディこそ、同業者スパイのスラグワースが狙う門外不出のキャンディ。スラグワースは子供たちひとりひとりに高額な報酬と引き換えに情報提供をするよう耳打ちしていました。そのキャンディをワンカは「一生誰にも見せてはいけない。」と5人の子供たちに一個ずつくれました。

このキャンディは誰も口に入れなかったので、どんな味なのか気になるところです。

 

<試されるチャーリー>

子供たちは見学する前に、細かすぎて読み切れない程の注意事項を書いた誓約書にサインをするように言われサインしています。

最後の一人に残ったチャーリーはご褒美のチョコレートを貰えるはずでしたが、途中でふわふわドリンクをこっそり飲んでいた事をワンカは気付いていました。

誓約書にはその旨の記載があり規則違反だとして、チャーリーにチョコレートはあげられないと言います。ワンカは詐欺師だと怒ってしまったおじいちゃんは「スラグワースに言いつけてやる!」とガッカリするチャーリーを連れて帰ろうとします。

と、その時チャーリーは一生溶けないキャンディをワンカに返して帰ろうとします。

実はチャーリーを試していたワンカはこの行動に大喜び。正直で心の優しい子供を見つけたのでした!

スパイだと思っていたスラグワースはワンカの部下で、子供たちを試すためだったのです。

 

<夢のワンカべーター>

ワンカは上下移動だけでなく縦横斜めと自由に移動できるワンカべーターに、チャーリーとおじいちゃんを乗せます。「まだ押していないボタンがあるから押してごらん。」と言うワンカ。チャーリーがそのボタンを押すと、ワンカべーターは工場の屋根を突き破り空高く上空を飛んでいきます。

眼下に広がる街並みに感激するチャーリーに工場を継いで欲しいと言うワンカ。2人は抱き合って喜びます。

Paramount Pictures Corporation
<最後に>

とてもシンプルなストーリーですが、チャーリーの夢が叶ったラストシーンには何度観ても涙が出てしまいます。ワンカべーターから見下ろす街並みがとても美しいです。

ワンカは子供たちにも「変な人」と言われる変わり者ですが、まるで子供の様な純粋な心を持った、チョコレート大好き紳士として描かれています。

ウンパルンパの衣装や手漕ぎボートのデザインもとても可愛いくて、子供の頃、誰もが抱いたお菓子への夢や憧れを思い出さずにはいられない…そんな作品です!

 

是非一度、ご覧になってみて下さい!

 

 

最後までご覧頂きありがとうございました!

 

 

 

映画「ドラキュラ/デルメル号最期の航海」ネタバレ感想

本当に怖い吸血鬼伝説「ドラキュラ/デルメル号最期の航海」は本当に怖いのか?

観る前からそればかり気になっていました。

”本当に怖い”って冠…あまり信ぴょう性高くないですよね?笑

ブラム・ストーカーによる名作小説「吸血鬼ドラキュラ」から、最も恐ろしいと評される”第7章”を始めて映画化!と聞いては、否が応にも期待が高まってしまいます!

前半はネタバレなし、後半ネタバレありで感想を書いていこうと思います。

ユニバーサル・ジャパン公式サイトより

 

<作品情報>

「ドラキュラ/デルメル号最期の航海」

原題:The Last Voyage of the Demeter

2023年/アメリカ/119分/PG12

監督アンドレ・ウーヴレダ

ジェーン・ドウの解剖、スケアリーストーリーズ怖い本、など)

キャスト

クレメンス医師/コーリー・ホーキンズ

アナ/アシュリン・フランシオーシ

トビー/ウディ・ノーマン

ヴォイチェク航海士/デビッド・ダストマルチャン

ドラキュラ/ハビエル・ポテット

エリオット船長/リーアム・カニンガム

ジョセフ/ジョン・ジョン・ブリオネス

 

<あらすじ>

ルーマニアのカルパチア地方からイギリスのロンドンまで、中身の分からない50個の木箱を運ぶためにチャーターされた帆船デルメル号は、航海の途中で毎夜不可解な事件に遭遇する。船長の航海日誌に記された一か月におよぶ無慈悲な存在の対峙の記録をもとに、大海原を渡るデルメル号に一体何が起こったのか?謎に包まれた恐怖の物語が展開する。

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<実力派キャストの共演>

ざっとキャストの名前を見ても、誰もが知るような俳優が見当たらないのですが、出演作を聞けば「あーっ、あの人!」となること間違いなしです!

主人公は「イン・ザ・ハイツ」ホリー・コーキング

船長は「シークレット・オブ・モンスター」リアム・カニンガム

船長の孫トビーは「カモン・カモン」ホアキン・フェニックス相棒の少年だったウディ・ノーマン君

航海士は「ザ・スーサイド・スクワッド"極”悪党、集結」ポルカドットマンだったデヴィッド・ダストマルチャン…見た目が違い過ぎて、観ても分かりませんでした(笑)

 

特に、子役のウディ・ノーマン君は今後必ず大物俳優に仲間入りする未来が予想できますので、要チェックです!

eigawayomimono.com

 

そして何と言っても、今作で異彩を放っていたのはドラキュラです!

ドラキュラと言えばこんな感じと想像出来る程、そのキャラクターは固まっていると思います、が、全然違いました。どちらかというとモンスターのような造形で、コウモリ男と呼ぶにふさわしいドラキュラでした。

演じたハビエル・ポテットさんは身長2メートル越えで細長~い手足の持ち主。その体型を生かしCGなしで演じています。

恐らく初めて目にするであろう、大きくて、おぞましいドラキュラここに爆誕です!

そのドラキュラが首の動脈に噛みつくのですから…怖いです!

 

<撮影はほぼ船内のみ>

冒頭とラスト以外は船内での出来事を描いたワンシチュエーション・スリラーです。そこが強みでもあり、弱みでもある気がします。船内は狭い・暗い・入り組んでいる・逃げ場がないなど、ホラーを描くにはうってつけです。ただ、約2時間の上映時間中、ほぼ船内の出来事だけを描くというのは、ちょっと厳しかったかな?と感じました。

やはり撮影時期がコロナ禍だったという事も影響しているのでしょうか?

本作に限らず、最近公開される作品は、ワンシチュエーションものが多いですよね。

ただ、本作には続編が用意されているのでは?そしてもちろん、船は降りてロンドンを舞台に描かれるのでは…と続編が観たくなるような終わり方でした。(詳細はネタバレ感想で!)

そしたら、もっともっと面白くなるであろう底力を持った作品でした。

 

従って…怖さレベルは60!(グロさはないが雰囲気が怖い)

食糧である家畜が全滅し異変に気付くといった、不穏な空気の描き方が上手!

ドラキュラとしてはかなり狂暴な部類で容赦なく人を襲います!

 

 

ここからはネタバレが含まれますので、未鑑賞の方はご注意下さい!

 

<50個の木箱の中身とアナ>

これは観る前でも分かりますよね?ドラキュラの住まいだと…(笑)

中には土が入っていて、その中に居たであろうアナという女性が早い段階で発見されました。感染症に犯され、衰弱していたアナを医師であるクレメンスが輸血して助け一命を取り留めます。アナが船に乗せられていた理由は、ドラキュラの食糧としてですし、住んでいた村はドラキュラによって壊滅状態にされたとあって、復讐心満々なのでクレメンスの良い助っ人になってくれました。

ちょっと驚いたのが、ドラキュラが食糧を日割り計算しているので、ひとりずつしか襲わないという意外と几帳面な生態です。

ドラキュラの造形がモンスターすぎるので、人間の血が食糧だと言うことをつい忘れてしまいます(笑)

 

<ドラキュラの弱点が見どころ!>

本作で描かれるドラキュラは見た目以外にも従来のドラキュラと違う点がございまして…弱点だと思われていた十字架も、全く抗力を発揮することなく、十字架のネックレスを下げたトビー君は、あっさりやられてしまいました。

こうなってくると、苦手とされているニンニクはどうなんだろう?と疑問が湧いてきます(笑)

そして、この作品中一番と見どころだと思えたのは、ドラキュラに襲われたトビー君が息絶えてしまい、船員たちが遺体を海に投げようとするも孫の死を受け入れがたい船長はその遺体にすがりつく。丁度そこへ朝日が差し込み発火したトビー君の遺体が船長に抱きつき共に燃え上がる。美しくも悲しいシーンに涙がこぼれました。

ドラキュラは日光に弱く、夜にしか活動できないという生態は従来通りだったのですが、日光をあびると人体自然発火して燃え上がる描写が斬新で素晴らしかったです。

 

<終盤の展開はあの作品のオマージュ>

船映画といえば有名なのはタイタニックですが、クレメンスとアナの2人が木片にしがみついて海に漂流し、体力も限界に近づくというシーンはオマージュでしょう。

その後、ドラキュラに噛まれていたアナも朝日を浴びて燃えてしまいました。

クレメンスの体からは炎が上がらなかった所をみると、血は汚染されていなかったのでしょうけれど、傷を負っていた様だったのですが…

そして、冒頭で描かれていた通り、デルメル号は生存者ゼロで岸に流れ着いたのですが、クレメンスは海を漂流し、ただひとりひっそりと生き永らえていました。

そしてラストシーン。ロンドンに姿を現したクレメンスが木箱の送り先であるカーファックスの屋敷を探していたり、何者かの影に怯える様子が描かれ、一瞬チラッと映し出されたのは、マントを羽織り杖をついたドラキュラ伯爵の姿でした!

こんな思わせぶりなラストシーン…続編を期待してしまいます!

 

<もし、続編が出来たら…>

本作は地味ながら、丁寧に作られたゴシックホラーの良作ですが、2時間ずっと船上というのは少々厳しかったと思われます。それが悔やまれるというのが正直な感想です。

なので、もし続編の制作が決まったら、ロンドンの街を舞台にのびのびとですね、家畜、犬、子供にまで容赦しないその狂暴さを発揮してもらいたいと願っています。

これで終わってしまったら、ちょっと勿体ないくらい素敵なドラキュラさんでした!

 

最後までご覧頂きありがとうございました!

 

 

映画「アステロイド・シティ」の難解ストーリーを楽しむ方法!(ネタバレなし)

ウェス・アンダーソン監督の最新作「アステロイド・シティ」を鑑賞してきました!

やはりスクリーンで観るウェス・ワールドは最高。眼福でした!

ただ、その一方でストーリーの難解さが際立つ作品でもありました。

監督のやりたい事を詰め込んだ結果、監督以外に理解できる人は居ないのでは?と思う部分も多く、それぞれのエピソードが点のままで存在することとなり、個人的には物語を紡いでいるように思えませんでした。

それでも、私は楽しんでいた方だと思います。大半の方は夢の中だったので…

「寝たけど面白かった!」という謎の感想も多かったですが、起きて観ていても理解できないのなら同じでしょうね(笑)

その上、早口でまくし立てるセリフ回しも多いので(それは本作にかぎらず)字幕を追う人間の身になってくれ!と言いたいです。笑

早々に愚痴っぽくなってしまいましたが、自分なりの正直な感想と観るべきポイントを書いていきたいと思います。

 

youtu.be

 

 

<作品情報>

「アステロイド・シティ」

2023年/アメリカ/SF・コメディ/105分

監督:ウェス・アンダーソン

キャスト

戦場カメラマン役オーギー/ジェイソン・シュワルツマン

女優役ミッジ/スカーレット・ヨハンソン

オーギーの義理の父役スタンリー/トム・ハンクス

ギブソン元師役/ジェフリー・ライト

ヒッケンルーパー博士役/ティルダ・スウィントン

劇作家コンラッド/エドワード・ノートン

整備工役/マット・ディロン

宇宙人役/ジェフ・ゴールドブラム

教師ジューン役/マヤ・ホーク

 

<あらすじ>

1955年アメリカ。隕石が落下したクレーターがトレードマークとなる砂漠の街「アステロイド・シティ」でジュニア宇宙科学大会が開かれ、5人の優秀な子供とその家族がこの街に招かれた。

大会の最中、突然宇宙人が現われ人々は困惑、アステロイド・シティは封鎖され、人々は隔離生活を余儀なくされる…という物語の劇中劇が描かれます。

 

<アステロイド・シティのモデルはロスアラモス>

ロスアラモスはニューメキシコ州北部の街で、核実験場があり、大戦中は外界との接触も禁じられていたと言う。

ステロイド・シティでも冒頭、アボカドやグレープフルーツと一緒に核ミサイルを積んだ列車が街を走るシーンが印象的で、時折、核実験によるきのこ雲が上がるシーンもありました。

当時はラスベガスからの”きのこ雲見学ツアー”なんかもあったそうですよ。

政府が天才の子供達を、核開発の科学者として利用しようとしている?そんな思惑も感じられます。

 

ロズウェル事件と宇宙人>

1947年。米軍によってUFOが回収されたという、今だ謎多きとってもミステリーな事件。

ステロイド・シティには、宇宙船に乗った宇宙人がひょっこり現れるシーンがあり、可愛らしい宇宙人の造形も良く、ここが作品一番の盛り上がりを見せ、笑っている観客も多かったです。

Tシャツのイラストにもなっていますね!公開前からめっちゃ露出過多!笑

公式ホームページのあらすじにも記載されていて、宇宙人突然の襲来は楽しかったのですが、知らなければもっと面白かったんだろうな?という思いもあります。

(あっ、この記事で知ってしまった方はゴメンなさい)

 



<宇宙人襲来とコロナ>

宇宙人の襲来により街から出られなくなってしまった人々。やはり、今を生きる私たちが真っ先に連想するのは、コロナ禍で一変した生活です。

妻の突然の死を受け入れられなかったオーギーが、子供達にやっとの思いで告知するシーンでは、コロナウイルスの蔓延によって突然失われた命を思わずにはいられませんでした。

 

そして、窓辺越しの会話を重ねるオーギーとミッジの微妙な距離感。

男女の距離感の詰め方としてはウェス・アンダーソン監督らしいシュールな描き方ですが、お互いを理解し合うのにはむしろ必要な距離感なんじゃないか?とさえ思わされました。

お互いに色々な経験を重ねて来たであろう大人の、互いを思いやりまったりと流れる上質な時を感じました。

アステロイドシティ公式サイトより



<モノクロパートはこの際無視しよう!>

舞台劇のパート(シネマコープサイズのカラー映像)

舞台裏のパート(スタンダードサイズのモノクロ映像)

この2つのパートを行ったり来たりする入れ子構造となっている点が物語をより難解なものにしています。もちろん舞台の表と裏の話なので関連性は無しではないのですが、ほぼ分かりませんでした(笑)

モノクロパートは実在した劇作家テネシー・ウィリアムズをモデルにした、劇作家コンラッドエドワード・ノートン)の話がメインになっていました。

きっと、何度か観れば繋がってくるのかもしれませんが…現段階ではこのモノクロパートの必要性が感じられませんでした。

それよりも、話のメインとなるカラーパートをしっかり追えていればおのずとマーゴット・ロビーが舞台裏でひょっこり顔を出した意味に気付けるはずです。

(出演はワンシーンだけですが、重要な役所でした!)

 

<見どころは徹底的に作りこまれた映像美!>

この作品の中に既製品は存在しているのでしょうか?笑

それはウェス・アンダーソン監督の作品全般に言えることですが、小物ひとつに至るまでこだわりのデザインで作りこまれた世界観は、唯一無二。

色調も砂漠と青空とポップな色使いのコントラストが見事でしたが、これを再現する為に青空が綺麗だと言われるスペインの地にセットを組むこだわりようです。

そして、50年代のアメリカといえば、ダイナーですよね!

個人的にもかなり憧れが強く、映画にダイナーのシーンが出てくるとそれだけでテンションが上がってしまいます。

本作に出てくるダイナーは古き良き時代のオールドタイプのデザインを踏襲しつつ、限りなくオリジナルなダイナーに仕上がっていて素敵でした!

そこで食事をとる、マリリン・モンロールックのスカーレット・ヨハンソンなんて絵になり過ぎですね(笑)

女優役の女優を演じる女優のスカヨハさん(笑)

難しい役を見事に演じていて、とてもセクシーで素敵な歳の重ね方をされているなと思いました。

アステロイドシティ公式サイトより
<最後に!>

ウェス・アンダーソン監督作品の中でも特に難解だとの意見の多い「アステロイド・シティ」なので、鑑賞前の予備知識として入れておくと理解力がアップしそうな項目をまとめてみました!

抜群の画ヂカラを持った作品ですし、豪華キャストが楽しんで演技している様子も微笑ましいものがありますので是非一度ご覧になってください!

 

最後までご覧頂きありがとうございました!

 

映画「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」オマージュ作品を解析!

2021年に劇場公開されたエドガー・ライト監督のサイコロジカルホラー「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」

もうご覧になられたでしょうか?

現代のロンドンに生きるエロイーズ役トーマシン・マッケンジーと60年代のロンドンに生きるサンディ役アニャ・テイラー=ジョイ

2人の若者の夢と絶望が妖しく交差する美しさと夜のソーホーに潜む闇。夢と現実がオーバーラップするような感覚に魅了されるタイムリープサイコホラーです。

そして、監督が公開時に公言していた名作オマージュ作品が、かなりガッツリと入って、この物語が構成されていました。

その作品のチョイスといい、使い方といい、やっぱりセンスの塊だな~とエドガー・ライト監督の作品が大好きな私は激しく感動しました!よって…オマージュ作品を深堀解説してみたいと思います!笑

 

 

youtu.be

 

<作品情報>

「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」

2021年公開/イギリス/116分/R15+

監督エドガー・ライト

脚本エドガー・ライト/クリスティ・ウィルソン=ケアンズ

キャスト

エロイーズ/トーマシン・マッケンジー

サンディ/アニャ・テイラー=ジョイ

ジャック/マット・スミス

ミス・コリンズ/ダイアナ・リグ

ジョン/マイケル・アジャオ

銀髪の男/テレンス・スタンプ

 

タワーレコードで前売り券購入の特典で貰った私物ポスター。素晴らしいデザインでとても気に入っています!

<あらすじ>

田舎でファッションデザイナーを夢見るエロイーズは、念願だったロンドンのデザイン学校へ入学するが、寮生活には馴染めず、ソーホーの片隅にある古いアパートを借りることに。ある日部屋で眠りにつくとエロイーズは憧れていた60年代のソーホーにタイムリープしていた。そこで歌手を夢見るサンディと出会い、2人の心と体の感覚がシンクロしていく。しかし、サンディの夢は次第にソーホーの闇に飲まれていき、エロイーズはサンディがある男に刺殺される場面を見てしまう。

エロイーズの周りをうろつく、怪しい銀髪の男。この男こそサンディを刺殺した犯人ではないか?と疑いをかけたエロイーズは事件の真相に迫っていく…

 

オマージュその①「サスペリアダリオ・アルジェント監督

<あらすじ>

ドイツにあるバレエ学校に入学する為、ニューヨークからやって来たスージー。しかし、その学校では不可解な失踪事件が起こっていた。その真相を突き止めようとしたスージーの身にも奇怪な出来事が次々襲い掛かる。

<オマージュ解析>

冒頭、学校入学のため新天地へやってきて、クセのある運転手のタクシーに乗り学校へ到着するまでのシークエンスが似ています。両作品とも、少女の期待と不安が入り混じった描写や運転手とのやり取りに、物語の主題をほんのり匂わせての始まりが秀逸です。

そして、強烈な原色の使い方。赤、青、緑…と場面によってくるくる使い分けていた「サスペリア」に対し本作では、ソーホーの夜のいかがわしさを印象付けるようにネオンの赤い光、青い光が印象的で、エロイーズの住むアパートの窓からも入り込むような形で使われていました。

 

オマージュその②「反撥」ロマン・ポランスキー監督

<あらすじ>

ロンドンのアパートで姉と暮らすキャロル。姉が妻子持ちの男を毎晩のように部屋に連れ込むことから、強い性嫌悪を抱き、男に犯される悪夢を見るようになり精神を病んでいく。キャロルの男性恐怖症は次第に加速し、ついに殺人まで犯してしまう…

<オマージュ解析>

寮で同室になった子が部屋に男性を連れ込み部屋を追われるエロイーズの様子や、タクシー運転手のセクハラまがいの対応に怯えるよう様子から、エロイーズが性嫌悪感を抱いている事が分かります。

寮生に馴染めず孤立していたエロイーズを気にかけ、声をかけていた後のボーイフレンド・ジョンの事も始めは冷たくあしらっていました。

物語の全体の骨格を形作る強いオマージュが「反撥」からは感じられ、キャロル役のカトリーヌ・ドヌーブの姿が「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」のもう一人のヒロインのようにオーバーラップしてしまう程でした。

歌手を夢見て芸能界に足を踏み入れたサンディが、男達に搾取されるようになってしまいます。まるで売春婦のように闇落ちしていく様子をタイムリープで見てしまったエロイーズは、顔のない男達の亡霊を見るようになり精神を病んでいきます。

その不気味さや気持ち悪さの表現がオマージュとして生かされています。

 

※ここからの文章にはネタバレが含まれておりますので、未鑑賞の方はご注意ください!

 

オマージュその③「赤い影」ニコラス・ローグ監督

<あらすじ>

イギリス人のバクスター夫妻は水難事故で愛娘を失ってしまう。その後仕事でイタリアのベニスを訪れた夫婦は、年老いた姉妹と出会い、盲目で霊感の強い妹の方から「赤いレインコートを着たクリスティンが父親ジョンの身が危ない。」と言っていると告げられ…

 

<オマージュ解析>

水難事故にあってしまった際に着ていた赤いレインコートの印象が強烈で、娘の死後もその赤い幻影が夫婦につきまとって離れないという、じっとりした怖さのオカルト・サスペンスです。

この物語のラストで父親・ジョンは赤いレインコートを着た子供の姿を見かけて追いかけるのですが、振り向いたその姿は小人の老婆だったという衝撃的なオチでした。

 

「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」ではサンディが着ている白いビニール地のコート(エロイーズも古着店で似たデザインの白いコートを購入して着ていましたね。)が赤いネオンに照らされて、時折赤く染まって見えます。

それがどことなく、ラストの展開を暗示しているように思えました。

それは、サンディが刺殺された側ではなく、ジャックを刺殺していた当事者であったことが明らかになったことと、事件からかなりの時間が経過しており当時名乗っていたサンディという名を葬り、ミス・コリンズと名乗る老婆になっていたことが「赤い影」の結末とダブります。

「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」オフィシャルより
<ラスト・ナイト・イン・ソーホーの結末>

実は60年代当時、ソーホーを見守る警察官だった銀髪の男が「アレクサンドラが殺した」と謎のメッセージをエロイーズに残し、目の前で車にはねられ死亡します。

そしてその後、エロイーズの大家であるミス・コリンズの部屋で彼女宛ての封書に”アレクサンドラ”と書かれた宛名を見たことで、疑いが確信に変わるというラストでした。

 

オマージュされた名作の配信があるのは(2023年8月現在)U-NEXTだけです!

是非「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」と合わせてご覧ください!

映画の世界がぐっと広がりますよ。

 

 

最後までご覧頂きありがとうございました!

 

映画「ボイリング・ポイント/沸騰」チューボー・パニック・ムービー!

私も飲食店で働いていた事があるので分かるのですが、お客さんが集中する日や集中する時間帯の忙しさと混乱は凄まじいものがあります。

目の前の仕事をこなすのが精一杯なので、注意力散漫、当然ミスも起こりやすくなります。もう泣きたくなるほどのストレスです…そんなレストランの混乱状況をギュッギュっと濃縮して90分に納めてしまった映画「ボイリング・ポイント/沸騰」をご紹介します!

逃げも隠れも出来ない、NGも出せない、90分の長回しワンカットのライブ感に何故かワクワクしてしまいます。ノー編集、ノーCGというのも凄い!こういう作品て他にないので、とっても新鮮に感じられますよ!

「ボイリング・ポイント/沸騰」公式サイトより

 

<作品情報>

「ボイリング・ポイント/沸騰」

2021年/イギリス/95分/PG12

監督:フィリップ・バランティー

キャスト

ティーブン・グレアム

ジェイソン・フレミング

レイ・パンサキ

ハンナ・ウォルターズ

 

<あらすじ>

一年で最もにぎわうクリスマス前の金曜日。ロンドンにある高級レストランの料理長アンディは妻子との別居で仕事に身が入らず疲れていた。店の抜き打ち衛生検査が入り、書類の不備やチェック体制の甘さを指摘され、評価レベルを落としてしまう。

そんな中、開店時間を迎えキッチンも慌ただしくなってきた。予約一杯、満席の店内でスタッフは混乱を極めていた。そんな中アンディのライバルシェフ・アリステアが有名なグルメ評論家を引き連れて来店。更に脅迫まがいの取引を持ち掛けられ困惑するアンディ。店のスタッフやアンディは波乱に満ちた一日を乗り切ることはできるのだろうか?

youtu.be

<感想>

一見、ドキュメンタリーかな?と思ってしまうリアルで臨場感溢れる映像なのですが、かなり意地悪な脚本が用意されていましたね(笑)

フォロワー数3万だからとイキってメニューにない無理な注文を強要するインフルエンサーの客とか腹立ちましたね。メニューにないステーキの写真をUPしたって余り店にメリットないですよね?(笑)

かなり即興での演技も入っていたようですから、きっとお怒りの演技では無く素だった事でしょう(笑)

観た人の感想の中には、「おいしそうな料理が見たかった。」「料理の手さばきが見たかった。」という意見をチラホラ目にしました。

90分のワンカット長回しの作品で、俳優さん達にそれを求めるのは厳しいかもしれませんね。舞台はレストランですがタイトルは「沸騰」ですから、この作品にグルメを求める方にはお勧めできません。

本作は「お仕事パニックムービー」ですね(笑)

 

「料理を作って提供する事」に付随してくる仕事や気にかけなければいけない事の余りの多さに驚かされます。

衛生管理、食材の仕入れ、売上や人件費も経営する上では考えなければいけませんし、中でもアレルギーの有無は命に関わることなので慎重に対応しなければいけません。

お客さんが店員にアレルギーの有無を伝えていたにも関わらず、ミスが起きてしまったらもうその店はアウトです!そして、このレストランでもナッツアレルギーの客にナッツの入った料理を提供してしまいます。

このアレルギーの件だけでなくこの日に起きたアクシデントのほとんどが料理長アンディのミスという、救いようのない事実。

最初はミスをしたスタッフに当たり散らすんですけど、ミスが起こった原因を探すとアンディなんですよ(笑)

そもそも疲れ切ってるアンディなのですがそこへ、どんどん心労が積み重なっていくように描かれているのがラストでガツンと効いてました。

超ハードだった1日がついに沸点を越えてしまった様なラストまで見どころ満載な作品でした!

 

 

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最後までご覧頂きありがとうございました!

映画「フェイブルマンズ」はスピルバーグ監督が”映画を撮る覚悟”を決める話

スティーブン・スピルバーグ監督の作品と言えば?「E.T」「シンドラーのリスト」「インディー・ジョーンズ」近年だと「レディプレイヤー1」など、好きな作品や思い入れのある作品が皆さんにもあるのではないでしょうか?

本作「フェイブルマンズ」は輝かしい経歴を持つ、スピルバーグ監督の自伝映画という事で、監督としての秘話や苦悩が描かれるのでは?と思われた方も多いのではないでしょうか。

しかし、スピルバーグ監督の7歳~18歳までの監督になる以前を描いた作品ということで、正直ちょっぴり残念に思いました。

監督になってからの話の方が面白そうだな?と(笑)

観た感想としては、本当に極めて個人的な、主に家族の話ばかりなのに面白かったんです!

これはもう「映画うま男」と呼ばれるスピルバーグ監督の成せる業だと感激した作品でした!

「フェイブルマンズ」公式Xより

 

<作品情報>

「フェイブルマンズ」

2022年/アメリカ/151分/PG12

監督 脚本:スティーブン・スピルバーグ

キャスト

ミッツィ・フェイブルマン/ミシェル・ウィリアムズ

バート・フェイブルマン/ポール・ダノ

ベニー/セス・ローゲン

サミー・フェイブルマン/ガブリエル・ラベル

ボリス伯父さん/ジャド・ハーシュ

<あらすじ>

1952年、アメリカ・ニュージャージー州に暮らすフェイブルマン一家。長男サミーは両親に連れられ初めての映画鑑賞。セシル・B・デミル監督作「地上最大のショウ」を観たサミー少年の目は釘付け。すっかり映画の世界に夢中になってしまいます。

映画で観た、列車と車の衝突シーンを何度もおもちゃで再現していたサミー。ある日、「撮影しておけば何度も観られるわよ。」とピアニストの母親ミッツィから8㎜カメラをプレゼントされる。それ以来、家族の様子を記録したり、妹たちとホラー映画のまね事を撮ったりとカメラが手放せない程夢中になります。

1957年、エンジニアの父親バートの転職に伴い一家はアリゾナ州へ引っ越します。仕事仲間でもある父の親友ベニーも一緒でした。

10代になってボーイスカウトに入ったサミーは、仲間を映画をつくって上映します。評価してはくれるものの、映画は趣味と言う父親と、映画を仕事にする事に夢を抱き始めたサミーは衝突するように…

youtu.be

 

※感想はネタバレを含みますので、未鑑賞の方はご注意下さい!

 

<幼少期にはもうすでに決まっていた?>

映画と出会ってしまった少年の初期衝動の描き方が素晴らしかったです。

真っ白なキャンバスを暴走列車が突き破って走り抜けるような感覚を受け取りました。

まだ、自宅でビデオや配信で繰り返し観ることが出来なかった時代背景も大きいとは思いますが、すでに意識が作る側なんですよね。

そこで8㎜カメラを買い与えたピアニストで芸術肌の母親無くしては、スピルバーグ監督の誕生は無かったかもしれませんし、映画の歴史は変わっていた事でしょう。

そして緻密に計算されたスピルバーグの作品からは、論理的で現実志向の優秀なエンジニアだった父親からの影響も感じられます。

ちょっと嫉妬してしまう程、羨ましい環境と遺伝子が備わっていますよね!

 

<大叔父の言葉>

ある日突然フェイブルマン家を訪ねてきた大叔父ボリス(ジャド・ハーシュ)。見た目はいかにも偏屈そうなお爺さんですが、言葉に説得力があり、圧倒的な存在感が素晴らしかったです!

ボリス伯父さんは、ハリウッドに関わる仕事をしてきたようで、業界の光と闇を色々見てきたのでしょう。

「お前は映画を作る、そして苦しむ。心を引き裂き、孤独になる…」

神のお告げか警告か?

 

その後サミーはキャンプで撮ったフィルムを編集していると、そこに映し出されていたベニーと母親の姿を見て、2人が愛し合っていることに気付いてしまいます。

叔父さんのお告げ通り、心は引き裂かれ、誰にも言えず孤独になってしまったサミーが痛々しかったです。

カメラは時に、見たくもない真実を捉え映して出してしまうのです。

 

<何故、母親役にミシェル・ウィリアムズを選んだのか?>

ピアニストで芸術家肌の母親ミッツィを演じたミシェル・ウィリアムズ

子供達の感性を伸ばす、寛容さが魅力的な女性を好演していました。しかし、物語が進むに連れ、夫婦共通の友人であったはずのベニー(セス・ローゲン)に気持ちが傾いている様子が色濃くなってくると、私にはある作品が脳裏によぎってきました。

それは2012年サラ・ポーリー監督作「テイク・ディス・ワルツです。

この作品でミシェル・ウィリアムズセス・ローゲンは夫婦役で、ミシェル・ウィリアムズが他の男性を好きになってしまい苦悩する役なのですが、本作と同じ種類の涙、泣きの芝居をしています。

スピルバーグ監督は「テイク・ディス・ワルツ」をもしやご覧になっていて、この2人とご両親の姿が重なって見えたのではないかと勘ぐってしまいました。

2作品、合わせて観ても面白いです!

 

eigawayomimono.com

 

 

スピルバーグ青春物語>

高校生になるとユダヤ人だという事で、ユダヤのパンをロッカーに入れられて、ベーグルマンとからかわれたりしていました。

人種や宗教、文化の違いで考え方の違う同級生とも、なんとな~く上手くやっていくのにも、カメラが一役買っていたのかな?とビーチでの撮影風景からは感じました。

めちゃくちゃチャーミングなキリスト教徒の彼女も出来て、宗教の違いによるサミーの戸惑いもコミカルに描かれていましたね!

そのビーチでの様子を学校で上映した日の、ローガン(スクールカースト上位のイケてる男子)のリアクションは自分が思っていたものとは真逆だったので、驚きました。

イケてる自分に酔いしれるタイプだと思っていたので(笑)

上映後にはチョッカイ出してた女の子が自ら寄ってきてキス。ローガンご満悦かと思いきや、泣いちゃいました。

まるで、ヒーローのように映し出される自分の姿がマヌケに見えてしまったようでした。

ここでは真実を映しているつもりが、虚構を生んでしまったというのが皮肉です。

でも「5分だけでも友達になりたかった。」というサミーの叫びがローガンに届いたようで一件落着でした(笑)

 

<リンチ登場!>

よれよれの薄汚れた服を着た老人。一瞬誰か分からなかったのですが、やけにハリのある声で気付きました…デヴィッド・リンチ監督だと(笑)

巨匠ジョン・フォード監督に成りきるために、2週間前から同じ衣装で眼帯もつけて役作りに徹していたとか…通りでボロボロなはずだ(笑)

ずーっと個人的な話だったのに、最後に映画ネタをぶち込んでくるあたりは上手いな(ズルいな)と思いました。

水平線が上にあるか?下にあるか?それとも真ん中にある退屈な映画なのか?

今度から映画を観るときは気になってチェックしてしまいそうです。

特に、スピルバーグ監督の作品は要チェックですね(笑)

 

<終わりに>

スピルバーグ監督が夢を意識し始めた矢先のトラウマとも言えるような出来事。自分の思惑とは関係なしに、ときに真実を、ときに虚構を映し出す映画の怖さを経験し、それらを通し成長していく過程で”映画を撮る覚悟”を固めるまでの物語だと思いました。

「この自伝映画を撮る事なしに、自身のキャリアを終えることは考えられない。」と言う程、監督にとっての重要な作品なのですが、”自伝”だというを意識せずとも、上質なヒューマンドラマとして楽しめる作品でもありました。

 

 

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最後までご覧頂きありがとうございました!

 

映画「アイスクリームフィーバー」映画の概念壊してる?

こう毎日暑いとアイスクリームが食べたくなりますね。でも冬に食べるアイスもまた美味しいんですよね!世界中の人を虜にする魅惑の食べ物です。

アイスクリーム屋さんに行くと、沢山の種類があってついつい迷ってしまいます。

そんな時「これはどんな味ですか?」って聞くと「薄いバニラみたいな…」と吉岡里帆さんが優しく教えてくれる、渋谷ミリオンアイスクリームというお店を舞台にした「アイスクリームフィーバー」という映画を観てきましたよ!

スクリーンから甘~い香りが漂ってくるような女優さん達の美しさにうっとり…

したのは間違いないのですが、映像や音楽の使い方など、かなり斬新な映画?だったのでそこら辺をお伝え出来たらと思います!

「アイスクリームフィーバー」公式Twitterより

 

<作品情報>

「アイスクリームフィーバー」

2023年/日本/103分/G

監督:千原徹也

原案:川上未央子

脚本:清水匡

キャスト

常田菜摘/吉岡里穂

橋本佐保/モトーラ世理奈

桑島貴子/詩羽

高嶋優/松本まりか

高嶋愛/安達祐嶋

高嶋美和/南琴奈

古川イズミ/後藤淳平ジャルジャル

 

<あらすじ>

異なる時間軸での2つのストーリーが交互に描かれていきます。

美大卒でデザイン会社に勤めていた菜摘は、仕事で上手くやって行けず退職し、渋谷のアイスクリームショップでアルバイトをはじめる。ある日、客として店にやって来た佐保が気になり走って後を追いかけてしまい、それから度々話をするようになる。そんな時、菜摘は本屋で表紙に橋本佐保著と書かれた小説を偶然見つけてしまう…

●銭湯とアイスクリームをこよなく愛すキャリアウーマン高嶋優。ある日突然やって来た姪っ子の美和に、数年前に居なくなった父親を探したいと言われ困惑する。インスタグラムで見つけた父親の投稿が渋谷近辺なので、絶対この辺りに居るはずだと言う美和だったが、優は複雑な心境を抱えていた…

 

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<ネタバレなしの感想>

まるで、ダブルのアイスクリームのように、ふたつがひとつに溶け合うようなストーリーにしたかったそうです。

ふたつのストーリーは全然別の話なんですが、一部分溶けて混ざり合うような感覚は確かにありましたね!

 

まず、びっくりしたのがこれは映画ではない。」って字幕が出て始まったことですね。

「はぁ?」って、言葉そのまま受け取ったら、じゃあ何見せられるの?って(笑)

これは監督が作った映画製作会社のコピーで「枠や概念にこだわらず映画作りをしよう。」という意味らしいです。社訓みたいな感じですかね。

 

作品はこの言葉通りで、枠からはみ出ちゃってました。それを良いと思うか、受け付けないかで評価が分かれてしまう作品だと思います。

 

画角がスタンダードサイズ(正方形)、所々ですが酔いそうな程の手ブレ撮影、回顧シーンはモノクロ、2分割された画面、静止画…と思いつく限りの映像表現入れ込んできた感じです。

そこへ来て、凄い爆音が入ってクラブみたいになったり、音楽はとても良いのですが使い方のクセが強い(笑)

会話の沈黙を音で埋めていたりするので、会話の"間"が大切なのにそんなことして台無しじゃないか!と思う方も居るかもしれません。私も実際うるさいと思ったシーンもありました。ただ、そう思った時点で印象に残る作品になることは間違いないです。

良くも悪くも斬新でインパクトを残す、今まで観たことが無い作品です。

やや実験的な映画とも言えるかもしれません。

 

そんなインパクトある映像や音のせいか、何気ない会話や何気ないやり取りが、めちゃくちゃドラマチックに感じられるんです。

それが本作を観て、私が一番強く感じたことでした。

その積み重ねで、吉澤嘉代子さんの「氷菓子」がかかるシーンを迎えると、もう感情の高ぶりを抑えることが出来ず涙がこぼれました。

 

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そしてこの作品でとてつもない存在感を放っていたのが、モトーラ世理奈さんですね。

初めてアイスクリーム店に入って来た時に、吉岡里帆さんが一瞬で恋に落ちる感じ(ここも可愛かった)は映画館でリアルに私も体感?共感?しちゃいました。すごいオーラを放っていました。

中性的ともまた違うんですが、女性でも惹かれてしまうような独特の魅力がありますよね。

映画「青い春」に出ていた時の松田龍平さんを思わせる、クールなんだけど、今にも壊れてしまいそうな儚さもあって、目つきもそっくりだと思いました。

 

現在47歳の千原監督は90年代のカルチャーに影響を受けてきたようで、作品からもそれは感じられます。

意識したのはタランティーノ監督の「パルプフィクション」なのだそう。

個人的には、ウォンカーウァイ監督岩井俊二監督作品の影響も感じました。

映画「恋する惑星主演のフェイ・ウォンが歌う「夢中人」がめちゃくちゃいいです。恋の初期衝動を描いている所が本作と似ています。

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「アイスクリームフィーバー」は音楽映画なので、いい音響の大きなスクリーンで観ると心も大きく動いて感動もひとしおだと思いますので、間に合いそうな方は是非劇場でご覧ください!

鑑賞後の気分がめちゃくちゃ良かったです!スキップしながらアイス食べたくなるような気分になれます。

無理そうな方もまた後々、鑑賞してみて下さいね!

 

最後までご覧頂きありがとうございました!